チャットでコミュニケーションエラーを起こさないために

【本稿の要旨】

・チャットでは、主語と述語の対応に注意

コロナ禍もあり、チャットツールのビジネスでの利用は加速し続けています。

その反面、チャットツールによりコミュニケーションエラーが生じることは少なくありません。

皆さんも、「このチャットは文意が読み取りにくい」とお感じになった経験はありませんでしょうか。

※本稿ではメール以外のスレッド形式、チャット形式によるコミュニケーションをざっくりと「チャット」と表現しております。特定のサービスは想定しておりません。

チャットの読みにくさの原因

チャットの読みにくさの大きな原因は、

「主語と述語が対応していないこと」

です(これはチャットに限らずメールでも同様ですが、チャットはこれが顕著です。)。

そして、主語と述語が対応していない文章は往々にして、一文が長くなります。これも、読みにくさの原因になります。

なぜ、チャットで主語と述語の非対応が加速するかというと、

  • そもそも日本語は、主語を省略しがちな言語であること
  • チャットの場合、その手軽さゆえに、文章の構成や正確性という視点が疎かになりがちなこと
  • チャットの場合、書き言葉というよりも話し言葉の延長線で、文章を記載してしまいがちであること(話し言葉の場合、主語がより省略されがちであること)

が理由として挙げられます。

主語が「発信者」、述語が「発信者のアクション」であれば、そこまで大きな問題は生じません。

しかしながら、ビジネス上のコミュニケーションでは、複数の主体(=主語)が登場するため、主語と述語をきちんと対応させることが重要になります。

具体例

例えば、以下のようなチャットがあったとします。

「●●社の発注の件ですが、予定していた期日が迫っていましたので、詳細確認のためにお電話したところ、前回の注文と同様の仕様にする話が進んでいたようなのですが、担当者が不在なので、状況が把握できていません。」

この文章を読んだときに、(かなり)意地悪な読み方をすれば、

  • そもそも、弊社が●●社に発注をしているのか、それとも、弊社は●●社から発注を受けているのか
  • 「話が進んでいたようなのですが」という伝聞になっているが、電話をしたのは、このチャットの発信者なのか、それとも別の人が電話をして、チャットの発信者は電話をしていないのか
  • 「担当者」というのは、弊社の担当者か、●●社の担当者か

といった疑問が生じます。

これらの疑問は、主語と述語の対応関係が意識されていないことから生じています。

当然、同じ組織に所属している場合には、文脈によってある程度の判別はつくわけですが、情報の発信者が受領者の理解におんぶにだっこというのは、頂けません。

主語と述語の対応を意識して書き直すと、以下のようになります。

「●●社から弊社に対する発注の件です。期日が迫っており弊社担当○○が不在のため、私から詳細確認のお電話をしました。

弊社○○と先方の□□様との間で、前回の注文と同様の仕様にするとの方向で話が進んでいたとのことです。

本日は先方の□□様も不在で、詳細な状況は把握できていません。」

(期日が迫っていることを忘れて、弊社と取引先の担当者は夏休みを取ってしまったのかもしれません。対応せざるを得なくなったこの従業員の焦りからすると、もともとのチャットのようになってしまうことも致し方ないと言えそうです(いやいや、このご時世、担当者の業務状況を別の従業員が容易に確認できるようにしていないのがまずいんだ、という声も聞こえてきそうですが…))

実務上の留意点

チャットにおいて、正確性を意識しすぎると、チャットの大きな利点であるスピード感が損なわれるので、勿論、正確性とスピード感のバランスが必要です。

正確性の面では、情報受領者に過分な負担を強いないため、また、コミュニケーションエラーが生じかえってビジネスのスピード感が損なわれるのを避けるため、主語述語の対応という視点は欠かせません。

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