証券取引等監視委員会は、令和3年7月30日に、令和3年度版の「開示検査事例集」を公表しました。
「開示検査事例集」の公表について:証券取引等監視委員会 (fsa.go.jp)
不正会計をまとめた「Ⅵ 参考資料 表5」によると、不正会計等の件数のうち、「売上の過大計上/前倒し計上」の件数が令和元年に比べて4倍の8件になっています。
複数の虚偽表示を認定した事例があるため、この件数の増加により一概に売上関係の不正件数(企業別)が増加しているとは言い切れません。
しかしながら、コロナ禍による経営環境の悪化等は不正の動機となり、テレワーク等の推進が不正の機会を提供する可能性があり、コロナ禍でもビジネスを従前どおり遂行しているという思いが不正を正当化する可能性があります。
すなわち、不正のトライアングルに照らしても、コロナ禍においては不正リスクが高まるといえます。
一筋の光明としては、本年4月1日以降に開始される事業年度において適用される収益認識会計基準です。
収益認識会計基準の適用開始は、否が応でも、企業及び監査法人において収益の取扱いについての注意を促し、不正会計が未然に修正され、日の目を見ずに済むケースが増加するのではないかと推測されるためです。
ただし、本人と代理人の区別等、売上の総額に影響する規定については、不正の温床ともなり得るため(本来、純額表示すべきところを、総額で表示してしまう)、収益認識会計基準が不正会計に与える影響は来年以降の開示検査事例集を待つ必要がありそうです。