土地所有に関するリスクの再検討を(日経「熱海土石流 刑事告訴へ 住民、起点の土地所有者らを」(2021年8月13)に触れて)

熱海市で大規模な土石流が発生したことは記憶に新しいところですが、被災住民が、土地の所有者と前所有者を刑事告発するとともに、損害賠償請求訴訟を提起すると報じられました。

熱海土石流 刑事告訴へ 住民、起点の土地所有者らを - 日本経済新聞
静岡県熱海市の大規模土石流で、伊豆山地区に住む被災住民らが13日、市内で記者会見し、起点の土地で行われた不適切な盛り土が原因の可能性があるとして、週明けにも土地の現所有者と前所有者を県警熱海署に刑事告訴する方針だと明らかにした。両者を相手取った損害賠償請求訴訟を9月中にも静岡地裁沼津支部に起こす。請求額は計200億円前...

本件で土地所有者が刑事責任を問われる立場にあるのか、また、民事責任を負うのかどうかについては今後の経過を見る必要がありますが、この報道が、企業や個人が自らが所有する土地のリスク(特に災害リスク)を検討するきっかけになることが望まれます。

土地の地理的条件等によっては、本件と同じく土石流の起点となり得る可能性があり、適切な管理等がなされていなかった場合には、刑事責任・民事責任が問われることになるためです。

災害リスクは、資産の保有者が被害者となる文脈で検討されることが多いように思いますが、豪雨のみならず地震等も含めた災害大国である我が国においては、保有する資産が他人の生命・身体・財産に危害を加えるという視点(加害者になり得るという視点)も同様に持つべきものと思われます。

例えば、都市部に住む個人が田舎の土地を相続したが、管理等について相続人間で取り決めをせずに有耶無耶になっているといった状況が懸念されます。

異常気象が異常ではなく「日常」になりつつある現代においては、記録的な豪雨は予測できなかったため、それに伴う対策を講じることはしなかった、という主張はもはや成り立たなくなる可能性があるようにも思われます。

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