プロローグ:コミュニケーション、メールにするか?電話にするか?
取引先(担当者)とコミュニケーションを取るときに、どんな方法をとるか。
・直に会って話し合う
・電話でやり取り
・チャットツール
・メール
・FAX
・文書
この選択も実は立派な法律問題。
具体的には、将来の紛争リスクを見据えて法的に検討すべき問題だ。
紛争は突然に。
取引先とはとてもいい関係だから、「紛争リスク」なんて考える必要はない。
というのは少し短絡的かもしれない。
話がこじれて紛争化し、裁判所にて決着を付けざるをえない案件は、往々にして、当事者が取引当時は楽観的で、取引条件等を詳細に定めず、あるいは、口頭ベースでやり取りをしているケースが多い。
また、不確実性が高まっている現代において、想定外が起こることは想定内だ。
すべてが契約書になる
利用者が増えているチャットツールは便利でビジネスのスピードを高めてくれる反面、メールや文書に比べると内容の正確性にやや難があり、後から第三者が見たときに当時の文脈を読み取れないものも少なくない。
また、プラン次第では、履歴の保存が十分でなかったり、一覧性をもって履歴を確認できないケースもある。
だからといって、全ての取引について、(電子契約も含めて)契約書を交わす必要があるかというとその必然性もない。
契約書を交わすことは将来の紛争リスクを下げるための手段であって、ビジネスの目的ではない。
結局、当該ビジネスの性質、取引当事者の業界での立ち位置、取引の種類・頻度・不確実性等を踏まえて、将来の紛争リスクを評価した上で、どのコミュニケーションツールを使うのが、ビジネス遂行にあたって適切か、を検討するしかないのだ。
コミュニケーションツールが多様化している現代だからこそ、ツールを意識的に使い分ける必要がある。
ちなみに、電話は相手の時間を奪うから、コミュニケーションはチャットやメールを原則とすべきという言説に触れる機会が最近増えている気がするが、現代においても、あえて意識的に口頭でことがすべき場面もある(ただし、録音されている可能性があることにも留意が必要)。
エピローグ:弁護士立ちぬ
どの場面でどのコミュニケーションツールを使うかを事前に検討することにかかる費用と、裁判にかかる費用とどちらが重いか。
裁判には、弁護士費用だけではなく、様々な経営資源を割く必要があることにも思いを馳せて欲しい(弁護士と方針を打ち合わせる時間、過去の資料を洗い直すための従業員の時間、裁判所に提出する書面を確認する時間、証人尋問の準備をする時間。その時間でビジネスをどれだけ前に進めることができるだろうか。)。
創造的な人生の持ち時間は何年だろうか。
うちは、もめ事がないから弁護士なんて必要ないよ。
その言葉が、あなたの大切な時間を奪わないことを祈って。