ブックリスト【コーポレート・実務書(事例形式)】

コーポレート関連の案件に対応する際に有益な事例形式の実務書等をまとめています。

案件検討においては、条文・(代表的な)基本書・コンメンタール・逐条解説、判例が基礎にありますが、事例形式の実務書において類似の事例の解説がある場合には、検討にとって有益かつ見過ごせない情報となります。

(事例形式の実務書に思考を任せていては、自分で思考する力が身につかないことには留意すべきで、体系書に目を通すことを疎かにし、実務書のみを購入することに警鐘を鳴らすものとして、例えば、『弁護士の失敗学』(ぎょうせい、2014)102頁があります(自戒のみを込めています。)。)。

●『新訂版 実務相談 株式会社法』(商事法務研究会、1992)

旧法下での実務解説本だが、現行法の検討においてもなお有益なことが多い。
近時に出版されているコーポレート関連の書籍においては、本書を引用しているものも多く、孫引きをしないためにも参照しておきたい。

絶版本のため、事務所の蔵書や弁護士会の図書館の蔵書にて対応する必要あり(弁護士会においては禁貸出になっているため、図書館に行けば参照可能。)。

●西村あさひ法律事務所編『会社法実務相談』(商事法務、2016)

コーポレートの各分野の実務上の問題に触れている。種類株式の箇所など、参照しながら、執務することも多い。

『新会社法実務相談』(旧版のタイトル)はしがきとして、

「『実務相談株式会社法』…を目標に、正に学問と実務をコラボレートさせ、会社法の制度や規定の単なる紹介にとどまらず、学問的広がりを持ちつつ実践に役立つ書物を編集しようということとなった。」

『新会社法実務相談』はしがき ⅲ

との記載があるとおり、理論的な背景をしっかり踏まえつつ、実務上の問題を解決しようとする姿勢が貫かれている。

●大阪株式懇親会『会社法実務問答集Ⅰ~Ⅲ』(商事法務)

大阪株式懇親会『会報』に掲載された「法規問答集」を取りまとめたもの。

株主総会に関する問答が多いものの、例えば、Ⅲにおいて「持株会」に関する問答が12個用意されているなど、実務的に重宝する記載が多い。

参考文献等に関する言及はないものの、前田教授と北村教授の共著ということで記載の信頼も高い。

(実務的な問題を取り上げているため、回答にやや歯切れの悪い部分があるものの、)条文の規定と趣旨から丁寧に検討するという法学の基礎に忠実に従った記載になっており、メモランダムや法律相談の回答のお手本という観点からも参考になる。

Ⅰの上下は紙ベースでの入手が困難だが、kindle版が出ているため、若手の法務パーソンでも手元に置くことができる(Ⅱ、Ⅲもkindle版がでている。)。

●島田邦夫編著『取締役・取締役会の法律実務Q&A』(商事法務、2017)

島田法律事務所のメンバーによって執筆された取締役・取締役会に特化した事例解説本。

かなり突っ込んだ実務上の問題点についても言及があり、頼りになる一冊。

他の島田法律事務所の書籍としては、『メーカー取引の法律実務Q&A』(商事法務、2020)があり、こちらも有益な記載が多く、(業界の評判からして言わずもがなであるが)同事務所のクオリティの高さを伺わせる内容となっている。

●旬刊商事法務の連載「実務問答会社法」

連載が継続しており、実務上の最新のトピック(例えば、KAMと取締役等の説明義務といったまさに実務が本格的に動き始めたトピックなど)が扱われることも多く参考になる。

最近では、令和元年会社法改正に関する実務対応Q&Aが特集として組まれた。

旬刊商事法務は上場企業のコーポレートに関連した問題が取り上げられることが多いが、例えば、第20回の辰巳郁「株主総会における取締役の説明義務等と書面決議の可否」商事法務2163号42頁といった題材のように、非公開会社における検討において有益な論稿も少なくない。

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