「又は」と「若しくは」の用法

概要

いずれも選択的接続詞であり、英語の「or」に相当する。
すなわち、複数ある選択肢を示すときに用いる。

「又は」と「若しくは」の用法

同じ段階の選択肢については、「又は」を用いる。

選択される語句に段階がある場合には、1段階目に「又は」、2段階目に「若しくは」をそれぞれ用いる。

1 株式会社の業務の執行に関し、【不正の行為又は[法令若しくは定款]に違反する重大な事実】があることを疑うに足りる事由があるときは、次に掲げる株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

会社法第358条

上記においては、「不正の行為」と「法令若しくは定款に違反する重大な事実」が1段階目の選択肢であり、 「法令若しくは定款に違反する重大な事実」 の中の「法令若しくは定款 」が2段階目の選択肢ということになる。

留意点

選択肢が2つのときは原則として読点をつけない。

会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

会社法第7条

ただし、接続する選択肢が動詞、形容詞又は副詞の場合は、選択肢が2つのときでも読点をつける(文脈を考慮して、読点をつけないこともある。)。

2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

会社法第11条

なお、「…とき」「…場合」はどちらも仮定的条件を示すが、「…とき」においては選択肢が2つであっても読点を付ける傾向にあるのに対し、「…場合」においては読点を付けない傾向にあるように思われる。

会社法上、例えば、以下では、「…とき」の選択肢が2つの場合に読点を用いているのに対し、

監査役は、取締役が【不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき】、又は【法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるとき】は、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。

会社法第382条

以下では、「…場合」の選択肢が2つの場合に読点を用いていない。

1 【役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合】又は【この法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合】には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。

会社法346条

選択肢が3つ以上あるときは、最後の2つの選択肢のみを「又は」「若しくは」でつなぎ、そのほかは読点でつなぐ。

一 会社 株式会社合名会社合資会社又は合同会社をいう。

会社法第2条

参考文献

吉田利宏『新法令用語の常識』(2014、日本評論社)11頁以下

法制執務研究会編『新訂 ワークブック法制執務 第2版』(2018、ぎょうせい)800頁以下

石毛正純『法制執務詳解〔新版Ⅲ〕』(2020、ぎょうせい)645頁以下

タイトルとURLをコピーしました